ロシア帝国海軍の艦艇類別
2011/7/1〜

ロシア帝国海軍の艦艇類別の名称と簡単な解説です。


一等艦:Корабля 1-го ранга
 このカテゴリに含まれる艦艇の艦長は一等海佐(Капитан 1-го ранга:大佐)以上の階級を要求される。

艦隊装甲艦Эскадренные броненосцы
 いわゆる戦艦。海軍の主力であったが、1860年代に建造されたペルヴェネツ級機帆装甲艦までもがこの類別に含まれているので一概に主力艦とは言えない。
 なお、1907年に戦艦は戦列を組んで行動しなければならないからという理由で、戦列艦(Линейный корабль)という大時代な名称に変更された。
 また、第一次世界大戦中に日本からロシアへ返還された戦艦ペレスヴェート(戦艦相模)はロシアにおいては巡洋戦艦へあたる戦列巡洋艦(Линейный крейсер)に分類された。

一等巡洋艦Крейсер 1-го ранга
 装甲巡洋艦(Броненосный крейсер)に加えて防護巡洋艦(Бронепалубный крейсер)の一部を含む類別。
 一部は遠距離偵察艦(Дальние разведчики)という小分類名称で配備された。
 防護巡洋艦は一等巡洋艦と二等巡洋艦があるので、区別のために一等防護巡洋艦(Бронепалубный крейсер 1-го ранга)、二等防護巡洋艦(Бронепалубный крейсер 2-го ранга)などと呼び習わされていたらしい。
 おおまかに言うと、5,000t以上の巡洋艦は全て一等巡洋艦に類別された。ただし、防護巡洋艦スヴェトラーナは3,900t程度と小型だが海軍大臣用の巡洋艦として外交任務に就く都合上、一等巡洋艦籍に編入されていた。


二等艦:Корабля 2-го ранга
 このカテゴリに含まれる艦艇の艦長は二等海佐(Капитан 2-го ранга:中佐)以上の階級を要求される。

二等巡洋艦Крейсер 2-го ранга
 これは防護巡洋艦がほとんどを占めるが、一部は装甲甲板のない巡洋艦もあった。一等巡洋艦には類別されない3000~5000t程度の防護巡洋艦がこれに類別されていた。
 一部は近距離偵察艦(Ближние разведчики)という小分類名称で配備された。ちなみに、遠距離偵察艦も近距離偵察艦も搭載できる石炭の量はさほど変わらず、故に航続距離も大きくは違わない。いったい何をもって遠距離と近距離に分類したかは謎である。

沿岸防御装甲艦Броненосец береговой обороны
 いわゆる海防戦艦モニター艦を合わせた類別。
 なお、日露戦争で日本と交戦した沿岸防御装甲艦はアドミラル・ウシャコフ級海防戦艦しか存在しないが、これだけは例外的に一等艦カテゴリに入れられている。

航洋砲艦Мореходные канонерские лодки
 その名の通り、洋上航行能力の高い砲艦
 いくばくかの甲板装甲と舷側装甲を備えたグロジャーシチイ級航洋砲艦などもあった。洋上航行能力があること、舷側と甲板両方に装甲を備えている点から装甲巡洋艦といえないことも無いが、もちろん装甲巡洋艦と比べれば戦闘能力は圧倒的に劣る。アレクセーエフ極東総督は航洋砲艦と装甲巡洋艦の違いを理解していなかった節があるが……。

水雷巡洋艦Минный крейсер
 水雷兵装を主武装とする、大型かつ航洋能力の高い艦艇の総称。

水雷輸送艦Минный транспорт
 いわゆる機雷敷設艦水雷母艦を合わせた類別。機雷敷設艦に関しては後に機雷敷設艦(Минный заградитель)に類別変更されたもよう。

補助巡洋艦Вспомогательный крейсер
 いわゆる仮装巡洋艦
 ロシアにはヨーロッパ・ロシアと極東ロシアを繋ぐ定期航路を運行していた義勇艦隊(Добровольный флот、Доброфлот)と呼ばれる組織があり、日露戦争では義勇艦隊所属の客船などが多数徴用された。


何等艦か分からないもの


水雷艇Миноносцы
 水雷兵装を主武装とする小型艦艇の総称だが、50t程度の水雷艇から300t程度の駆逐艦までを含んでいる。つまり、日露戦争の史料ではロシア側の「水雷艇」が日本でいう「駆逐艦」に相当している可能性が高いということなので、注意を要する。なお、1907年の類別改正以来、現在でもロシア海軍の駆逐艦は艦隊水雷艇(Эскадренный миноносец)である。さもなければ比較的新しいカテゴリである大型対潜艦(Большой противолодочный корабль)に分類されている。
 日露戦争当時は大尉が艦長をやっていることがあるので、順序よく行けばおそらく四等艦になると思われるが不明。



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